徳江さんの名前

予告編のシーン


「私、吉井徳江と言います」

 映画「あん」の予告編は、樹木希林さん演じる徳江さんのこの台詞から始まる。
 この予告編を観た人は、樹木さんが演じている役は「吉井徳江」さんだと認識し、試写会などで映画を観た人もきっとそう思っていることだろう。
 しかし、小説「あん」では、「吉井徳江」という名前に隠された事実が明かされている。
 ハンセン病療養所「天生園」にやってきた千太郎とワカナに対し、徳江さんはこんなことを話している。


「昔はらい病患者が出たとわかったら、残された家族も出ていくしかなかったの。それぐらい周囲から拒絶されて。だから私たちの大半は戸籍から抹消されたままなのよ。吉井徳江という名前は、ここで新しくもらった名前」


 親族にハンセン病患者がいることを知られないよう、家族は戸籍を抜き、療養所に入れられたハンセン病患者は「名前から家族が特定されて迷惑が及ばないように」と本名を捨てる。
 そして、死んでもなお、親族に迷惑がかからないよう、仮名のまま葬式をあげ、療養所内にある納骨堂に納められる。
 ハンセン病患者は生前も、そして死後も世間から隔絶された。
 ハンセン病が治って、「元患者」「回復者」となってからも状況は変わっていない。
 この悲しい事実をぜひ知っておいていただきたい。
 このことについては説明すると長くなるので、また別の機会に書き記そうと思います。






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[ 2015/05/03 20:23 ] 「あん」の風景 | TB(-) | CM(0)

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